日本赤十字北海道看護大学

災害対策教育センター

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災害対策研究

厳冬期災害演習2018が開催されました

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日本赤十字北海道看護大学は、2018年1月13日~14日にかけて厳冬期避難所展開・宿泊演習2018を実施いたしました。今回は全道はもとより福岡・大阪など全国各地から災害に関わる専門職者160名が集まり、過去最大の規模・人数となりました。

8回目の実施となる今年は、要援護者・環境衛生に配慮した「トイレ」「暖房」「ベッド」をキーワードとして、25時間に及ぶ避難所展開を実践的に検証しました。
人が生きる上で不可欠であるトイレから演習を開始し、既存の水洗トイレは使用不可の条件で、男女別の視点で展開した屋外仮設トイレの設営から既存の屋内トイレを断水時にも使用できるよう環境の整備を行い、停電かつ氷点下10℃に達する屋外気温においても安全に使用できる方法を論議しました。既存のワゴン車を応用して試作したトイレカーは、プライバシーと明かりそして温度を保てるかを検証しました。

通常避難所に敷かれやすいブルーシートは温かさには全く貢献しません。これを参加者全員が身をもって経験することから宿泊場所の演習が始まりました。毛布一枚が配布されただけでは寒さをしのぐことができず、冬の災害対策の難しさを経験しました。北海道開発局網走開発建設部の照明車の展開による屋内照明は、予想を超える明るさを提供し、つづく屋内の演習を安全に展開することに活かされました。今回の演習では既存の運動会等で使用される三方幕テントを応用した「シェルター」を展開しました。これまでのシェルターに比べ作業時間は非常に短く、室内環境の向上と実践的な運用に期待が持てます。
   

2年前から冬の避難所における有用性を明らかにしている段ボールベッドの展開演習では、第一世代から第三世代まで三種類の段ボールベッドの展開を経験し、最新型の第三世代の簡便性について賞賛の声が数多く挙げられました。フィンランド赤十字の資機材からヒントを得た二酸化炭素フリー暖房システムは、外気温が氷点下10℃に達しているにもかかわらず効率的に機能し、今後の開発に道筋がつけられました。
 

資機材だけでなく、冬の避難時の食についても考察されました。今回は北海道庁が主催した北の災害食レシピコンテストの応募作品の一つであったアレルギー対応のスープライスの製作に参加者全員で挑みました。本学のオリジナルハイゼックス(炊飯袋)を使用し、越冬野菜とブイヨンから作られるスープライスは冷え切った体を温めることに貢献し、味についても参加者から好評を得ておりました。翌朝の朝食では南極料理人の西村淳先生による特別な炊き出しが振る舞われました。スープカレーをベースにした「すいとん」で、冷え切った避難所で一夜を過ごした参加者に、低塩分でとてもおいしく十分なエネルギーを与えていただき、避難環境における食の重要性を痛感いたしました。

2013年3月の暴風雪事案を踏まえて毎年継続実施している車両立ち往生を想定した車中泊演習には突如降り出した雪の中、34名が参加しました。暴風雪によりマフラーが埋まる可能性を想定して、エンジンを停止した車内に3時間車中泊を試みましたが、防寒着と冬用の寝袋等の資機材を活用することにより、全員安全に乗り切ることができました。

翌日午前中に初めてエコノミークラス症候群の診断に関するセッションが実施されました。東日本大震災や熊本地震などの被災地でエコノミークラス症候群診断を展開されていた新潟大学の榛沢和彦先生にお越しいただき、エコノミークラス症候群の現状と成因そして診断の実際をご講義いただきました。その後エコーによる診断の実演と、エコノミークラス症候群に有用な弾性ストッキングの試着など実践的な内容が示され、参加者はエコノミークラス症候群への理解を深めておりました。

 以上が今回実施された厳冬期災害演習2018の概要となります。
 本演習を無事に終えることができたことは数多くの方々のご協力の賜物です。ご多忙の中ご参加いただいた皆様に深く感謝申し上げます。
 本演習で得られた検証結果は今後さらに分析を進め、災害系の学会等様々な場面で公表していく予定です。